一括ファクタリングとは、企業がもつ売掛債権を金融機関が一括で買い取り、企業の口座に代金を振り込むことを言います。昨今では、主に手形の代用として使われることが多くなっています。その際は以下の3社でやりとりをすることが多いです。
- 支払い義務を負っている企業
- 請求の権利がある企業
- 金融機関
仕組みとしては「買取り型ファクタリング」と同様のものになります。しかし、目的や用途は異なるので注意が必要なことも多々あります。
この記事では、以下のことを解説していきます。
- 一括ファクタリングの仕組みの特徴
- 一括ファクタリングのメリット
- 一括ファクタリングのデメリット
- 一括ファクタリングのでんさいとの違い
- 一括ファクタリングの3社間ファクタリングとの共通点と相違点
それでは一括ファクタリングを見ていきましょう。
一括ファクタリングとは?仕組みの特徴も徹底解説!
まず、一括ファクタリングとは何か、一括ファクタリングの仕組みの特徴をわかりやすく解説していきます。
一括ファクタリングとは手形の代用!
一括ファクタリングとは、手形の代用となるものです。手形は、支払いのために用いられる決済手段の1つとなります。手形のメリットは銀行保証の元で代金の支払を先延ばしできることです。
請求の権利がある企業にとっては手形はとても有効な仕組みですが、手形を発行する際に以下のようなデメリットも生じます。
- 煩わしい事務手続きが必要
- 印紙税が必要
このように企業にかかる負担は少なくはありません。この負担を軽減したものが、一括ファクタリングというシステムです。手形と同じく金融機関が保証をするので、信頼性の高い決済手段といえるでしょう。
一括ファクタリングの仕組みの特徴を徹底解説!
一括ファクタリングの仕組みを解説します。
- 支払いを行うべき企業がファクタリングを実施する金融機関とシステム登録・契約を行う。
- 金融機関は申し込みを受けて審査を行う。
- 問題がなければ支払企業と契約を締結する。(支払いを請求できる側の企業の手続きは不要。)
- ファクタリングにかかる所定の手数料を支払う。
- 資金化することができる。
- 支払いを行うべき企業は、設定された支払期日に代金を支払う。
通常1〜2ヶ月後に支払期日は、設定されますので比較的期日に余裕があり安心ですね。
一括ファクタリングのメリット4選
一括ファクタリングのメリット4選を紹介します。支払い義務がある企業側に2つメリットがあり、請求できる権利がある企業側にも2つのメリットがあることが一括ファクタリングの特徴です。
手形発行の手数料が不要
一括ファクタリングは、支払企業の手形発行負担を軽くする目的で取り入れられたシステムです。手形を発行するには、ステップを踏む必要があります。
- 企業と銀行が「当座勘定取引契約」を締結。
- 当座勘定口座を開設。
- 手形帳の交付を受ける。
- 手形の振り出しが可能
手形の振り出しはできますが、規定に則って書く必要が出てきます。
- 管理番号
- 支払地
- 名前
などの定められた項目があり、さらに定められた形式にそわなければなりません。
また、手形には収入印紙を貼付する必要があるのですが、額面によって金額が異なる点が注意が必要だと言えるでしょう。
手形額面 | 印紙税 |
---|---|
10万円以下 | 不要 |
~100万円以下 | 200円 |
~200万円以下 | 400円 |
~200万円以下 | 600円 |
~500万円以下 | 1000円 |
手形の発行には面倒な事務手続きと費用がかかるのがデメリットと言えるでしょう。手形を適切に管理する必要もありますし、事務にかかる負担は少なくないのが特徴です。
ここで、一括ファクタリングを活用すれば、上記の表のような印紙税も必要ありませんし、多くの手間も不要となる点がとても魅力的だと言えるでしょう。
企業としての信用力の向上
一括ファクタリングを利用するためには、大手金融機関の審査に通る必要があります。信用情報に問題がないと判断されたと言い換えることもできるでしょう。融資や信用取引の場面では、信用力の高い会社であるとアピールできますね。
さらに、「支払うべき額を早く支払ってもらえる」ということは、支払いを請求できる企業にとっても良い話に間違いがありません。商談の際も信用力の高い企業としてアピールできるのも良い点です。
早期にお金が入金されるというメリット
資金繰りを安定させるためには、すぐに現金が出せる状態である必要性があります。そうであれば、支払いを請求できる企業としては、商品やサービスの納入から代金受け取りまでの期間が短い方が、良いことに間違いはありません。
手形による代金決済では、支払期日は以下のように設定されます。
- 30日後
- 90日後
- 120日後
のいずれかです。
これでは翌月末以降の支払いとなってしまいます。企業の経営状況によっては、資金繰りが悪化することもないとは言えないでしょう。
ここで、取引相手が一括ファクタリングを活用していれば、資金繰りが安定します。代金支払を待つ必要もなく、本来請求できる額をすぐに資金化できるからです。貸し倒れのリスクもゼロに近くなりますので、キャッシュフローが安定する点が良いとされています。
手形管理事務の負担軽減が可能
手形の決済は、振り出された方にも手形を管理する必要があります。
支払いを請求できる企業は、支払日まで手形を適切に管理しなければなりません。もしも紛失すれば、代金を受け取れなくなるというリスクが出てくるでしょう。
また、手形を資金化するためには、支払期日を含めた3営業日以内に金融機関へ足を運ぶ必要があります。しかし、すぐに資金化できるわけではなく、口座の確認などが入るので金融機関に足を運んだ日から3営業日程度が必要です。
一括ファクタリングを活用することで、銀行を訪れる手間も必要ありませんし、リソースを自分の企業の業務に割くことが可能なことが良い点でしょう。
一括ファクタリングのデメリット2選
デメリットも双方の企業にないとはいえないのが現実での一括ファクタリング。一括ファクタリングのデメリットを見ていきましょう。
支払い期間が圧倒的に短い
一括ファクタリングの支払い期限は、手形よりもかなり短く設定されていることで知られています。支払い企業が代金の支払を資金繰りの関係で先延ばししたい場合もあるでしょう。支払い期間が短い点は不利に感じる企業が多いかもしれません。
手形の支払期限は最長で120日と定められていますが、一括ファクタリングの支払期限は60日です。経営が安定していない状態だと、短期の支払が負担となることもありますよね。
しかし、今後手形に関する法律が改正されることがあれば、一括ファクタリングではなく手形を選ぶメリットはゼロといっても過言ではありません。
自社都合での導入ができない
支払いを請求できる側の企業のデメリットとなりますが、一括ファクタリングを導入するかしないかは支払企業にしか決められないといった点が挙げられます。
手数料は発生するものの、一括ファクタリングなら早く現金を受け取ることが可能です。資金繰りを改善したい企業にとってはメリットしかないシステムだといっても過言ではありません。
とはいえ、一括ファクタリングを行う前提として、支払企業と金融機関の契約がある必要があります。もし支払いを請求できる権利がある企業が一括ファクタリングで支払いをしてほしいと考えたところで、相手次第で導入できない可能性が大いに出てくる点がデメリットです。
一括ファクタリングとでんさいの違いを徹底解説!
一括ファクタリングを見てきましたが、本来ならもっと多くの企業に活用されたほうがよいのではないかと感じる方も多いでしょう。しかし、実際には大手の金融機関が導入を進めているのは「電子記録債権(でんさい)」というシステムです。
でんさいとは
「でんさい」とは「でんさいネット」と呼ばれる「株式会社全銀電子債権ネットワーク」が取り扱っている「電子記録債権」のことを言います。一括ファクタリングと同じく、手形に代わる新たな決済サービスのことです。
紙媒体の手形を使った「手形割引」でも現金化はもちろん可能ですが、支払期日が来る前に約束手形を銀行や手形割引事業者で換金することができるというメリットがあります。そのため、とても人気を博しているサービスです。
でんさいを利用する流れ
それではでんさいを利用する5つのステップについて解説していきましょう。
- 金融機関に電子データを送信する。
- 手形割引同様に債権を譲渡可能。
- 支払企業が「でんさいネット」に売掛金の発生記録を請求する。
- 「でんさい」から請求権利がある企業へ通知。
- 支払期日には支払企業の口座から納入企業の口座へと自動で代金が振り込み。
無論「でんさい」と「一括ファクタリング」は似ているところもありますが、異なる部分も多いのが現状です。
でんさいと一括ファクタリングの違い
一括ファクタリングとでんさいの違いを、利用できる条件から1つずつ丁寧に解説していきます。
でんさいを利用するためにはこのような条件が出てきます。
- でんさいネットへの加入が必要である。
- 支払企業が倒産したときは弁済義務を負う。
- 利用者・金融機関・でんさいネットの間で利用契約を結ぶ必要がある。
- 手数料が必要になる場合もあるので、事前の確認が欠かせない。
他のデメリットは許せる部分が企業からするとあるかもしれませんが、弁済義務を負う必要が出てくるところが、デメリットになるということが言えるでしょう。
一方、一括ファクタリングでは支払うべき金額がある企業が売掛債権をファクタリング会社に譲渡したら、それ以降の責任は請求の権利がある企業は背負う必要がありません。つまり、未回収リスクも手放すことができるということですね。
でんさいにも一括ファクタリングにないメリットはあるので、一括ファクタリングとどちらを利用するべきか、様々な視点から見て考える必要があるでしょう。
一括ファクタリングと3社間ファクタリングの共通点と相違点
3社間ファクタリングと一括ファクタリングには共通点もありますが、相違点もあります。
一括ファクタリングと3社間ファクタリングの共通点
3社間ファクタリングと一括ファクタリングの共通点は売掛先・利用者・金融機関の3社が一括でやり取りすることです。同じファクタリングというサービスでもありますし、同じようなものに一見見えるかもしれませんが、目的や用途は異なることで知られています。
一括ファクタリングと3社間ファクタリングの相違点
一括ファクタリングはでんさいを利用しているような企業におすすめと言えるでしょう。
また、次のようなシーンの利用におすすめです。
- 大規模な資金調達
- 売掛金の一部現金化
一方で3社間ファクタリングは買取ファクタリングの1つです。建設業や運送業を営む企業、その他売掛金を有する一般企業におすすめです。
3社間ファクタリングは次のようなシーンで利用することが多い傾向にあります。
- つなぎ資金
- 大規模な設備投資
一括ファクタリングを利用しよう
一括ファクタリングを導入すると、双方の企業にメリットがたくさんありました。従来の手形を使って行われていた支払いは今日で終わりにすることをおすすめします。
金融機関に行く手間、手形の費用など、時間やコスト面の消費が、企業としては勿体無いことです。一括ファクタリングという、売掛債権を使って決済を合理化するための仕組みがあることですし、手形を利用するメリットはゼロと言っても過言ではありません。
金融機関に売掛債権を一括で買い取ってもらい、支払いを請求できる企業へ代金がすぐ振り込まれるサービスなので、売掛先にもメリットがあります。
一般的な「3社間ファクタリング」の仕組みと同じですが、一括ファクタリングは目的や用途において異なるところが引っかかる点でもありました。支払いを請求できる企業側だけがすぐに現金が欲しいと考えていても、支払企業と金融機関が契約を結ぶ必要があるので自社都合ではできかねるという点がデメリットです。
次に挙げるケースでは他の方法を考えた方が良いでしょう。
- 支払いを請求された企業の承諾を得ることができないケース
- 一括ファクタリングの手続きを待てないぐらい資金繰りが悪化しているケース
このようなケースでは、一般的な「買取型」のファクタリングを利用するべきです。自社の状況によってさまざまなサービスを活用していくことも考えていきましょう。