3社間ファクタリングをご存じでしょうか。
「ファクタリング」という言葉は聞いたことがあるけど、3社間ファクタリングと言われるとわからないという人が多いかもしれません。
3社間ファクタリングとはファクタリングの一種で、その他に2社間ファクタリングがあります。
この記事では、3社間ファクタリングについて、メリット・デメリットを解説するとともに2社間ファクタリングとの違いを解説します。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、売掛債権を譲渡することによって資金を調達する方法です。
個人事業主や中小企業にとって、資金調達する手段は主に銀行などの金融機関でしたが、2000年代以降普及してきた資金調達方法がファクタリングです。
銀行などの金融機関と比べると資金調達しやすいため、徐々に普及しています。
ファクタリング業者に手数料を支払う必要がありますが、資金繰りが悪化した際など、最短即日で資金調達できるため、個人事業主や中小企業にとってはありがたい制度になっています。
ファクタリングのメリット
そんなファクタリングには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ファクタリングのメリット・デメリットは、次のとおりです。
- 資金調達が容易
- 銀行のように審査が厳しくない
- 信用情報に傷がつかない
- 担保や保証人は必要ない
- ファクタリング業者が売掛金を回収するため、回収義務がない
資金調達が容易
ファクタリング最大のメリットであり、ファクタリング業者によっては最短即日で資金調達可能。
銀行のように審査が厳しくない
銀行の融資を受ける場合、数週間~1か月程度の審査期間を要しますが、ファクタングの審査はすぐに(最短即日~数日程度)終わります。
主な審査対象がつ売掛先だからです。
信用情報に傷がつかない
ファクタリングは借入れ(金銭消費貸借契約)ではなく、債権譲渡(債権譲渡契約)であるため、信用情報に傷がつきません。
つまり、延滞や滞納などが発生したとしても、信用情報に記載されることはないということです。
担保や保証人は必要ない
銀行融資の場合は担保や保証人が必要になりますが、ファクタリングでは担保や保証人は必要ありません。
というのは、ファクタリングは融資ではなく債権譲渡だからです。
ファクタリング業者が売掛金を回収するため、回収義務がない
売掛先が倒産した場合、ファクタリング利用者に返済義務はありません。
というのは、基本的にはファクタリング業者に回収義務があるからです。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングのデメリットは、次のとおりです。
- 手数料を支払う必要があり、手数料は銀行の利子より高い
- 売掛金から手数料が差し引かれるため、その分調達できる資金は少なくなる
- 資金調達は売掛金の範囲内でしかできない
- 悪質な業者がいるので要注意
手数料を支払う必要があり、手数料は銀行の利子より高い
ファクタリングを利用するには、ファクタリング業者に手数料を支払う必要があります。
銀行の利子とファクタリングの手数料は性質が違うため、比べられるものではありません。
しかし、敢えて比較すると、ファクタリング手数料のほうが高くなっています。
売掛金から手数料が差し引かれるため、その分調達できる資金は少なくなる
ファクタリングでは売掛債権を譲渡すると、ファクタリング業者が売掛金から手数料を差し引いた上で、ファクタリング利用者の銀行口座に債権購入金額を振り込みます。
資金調達は売掛金の範囲内でしかできない
ファクタリングにおいて、売掛金を超えた資金の調達はできないからです。
悪質な業者がいるので要注意
ファクタリング業者の中には、ヤミ金融業者のような悪質業者がいることがあります。
ファクタリング業者を装って違法な貸付けをしているヤミ金融業者がいますので、要注意です。
3社間ファクタリングとは?
3社間ファクタリングとは、ファクタリング利用者とファクタリング業者、売掛先の3社間で結ぶファクタリング契約のことです。
3社間ファクタリングの最も大きな特徴は、売掛先に売掛債権を譲渡する(=ファクタリング)ことの承諾を得る必要があることです。
2社間ファクタリングの場合は、売掛先に売掛債権を譲渡することを知らせないため、3社間・2社間ファクタリングの大きな違いになります。
3社間ファクタリングの流れ
3社間ファクタリングの流れは、次のようになります。
- 売掛債権の発生
- 売掛先に売掛債権を譲渡する(=ファクタリング)ことの承諾を得る(債権譲渡通知)
- ファクタリング業者にファクタリングを依頼後、売掛債権をファクタリング業者へ譲渡する
- ファクタリング業者が、売掛金から手数料を差し引いた金額をファクタリング利用者へ振り込む
- 売掛先がファクタリング業者へ売掛金を支払う
③について、ファクタリング利用者がファクタリング業者にファクタリングを依頼すると、審査があります。
審査は2社間ファクタリングと同様、主に審査対象となるのは売掛先です。
というのは、売掛先から売掛金を回収できない場合、すべての損失をファクタリング業者が負うからです。
3社間ファクタリングのメリット
3社間ファクタリングのメリットは、次のとおりです。
- 2社間ファクタリングよりも手数料が低い
- 2社間ファクタリングより審査に通りやすい
- 売掛金を回収する必要がない
- 大手金融機関で扱っていることが多い
- 債権譲渡登記をする必要がない
2社間ファクタリングよりも手数料が低い
3社間ファクタリングの手数料は、2社間ファクタリングよりも低くなっています。
- 2社間ファクタリングの手数料:10~30%
- 3社間ファクタリングの手数料:1~9%
というのは、ファクタリング業者にとって、2社間ファクタリングよりも3社間ファクタリングのほうが、売掛金の未回収リスクが低いからです。
2社間ファクタリングでは、ファクタリング業者はファクタリング利用者を通して売掛金を回収するのに対して、3社間ファクタリングではファクタリング業者が直接売掛先から売掛金を回収します。
そのため、2社間ファクタリングよりも3社間ファクタリングのほうが、売掛金の未回収リスクが低いのです。
2社間ファクタリングより審査に通りやすい
3社間ファクタリングの審査は、2社間ファクタリングの審査よりも通りやすくなっています。
というのは、3社間ファクタリングのほうが2社間ファクタリングよりも、売掛金の未回収リスクが低いからです。
売掛金を回収する必要がない
3社間ファクタリングでは、ファクタリング利用者は売掛金を回収する必要はありません。
というのは、ファクタリング業者が売掛金を回収するからです。
一方、2社間ファクタリングではファクタリング利用者が売掛金を回収した上でファクタリング業者に支払うことになっており、その点が3社間ファクタリングとの違いになります。
大手金融機関で取り扱っていることが多い
3社間ファクタリングは、銀行など大手金融機関で取り扱っていることが多いです。
というのは、2社間ファクタリングより3社間ファクタリングのほうが未回収リスクが低いからです。
債権譲渡登記をする必要がない
2社間ファクタリングでは債権譲渡登記が必要であるのに対して、3社間ファクタリングでは債権譲渡登記をする必要がありません。
2社間ファクタリングの場合、第三者に対する対抗要件を備える必要があるからです。
ここでいう対抗要件とは、売掛債権を譲渡したという効力を第三者に主張できることです。
一方、3社間ファクタリングでは、売掛先への債権譲渡通知により売掛先の承諾を得ることから、債権譲渡登記は必要ないのです。
3社間ファクタリングのデメリット
3社間ファクタリングのデメリットは、次のとおりです。
- 売掛先の承諾を得なければならない
- 即日での資金調達はできず、時間がかかる
- 売掛先にファクタリングをしたことが知られてしまう
売掛先の承諾を得なければならない
3社間ファクタリングでは、売掛先の承諾を得た上で契約に参加してもらう必要があります。
売掛先に断られるリスクもあるため、場合によっては2社間ファクタリングを利用したほうがいいかもしれません。
売掛先にファクタリングをしたことが知られてしまう
3社間ファクタリングでは売掛先から承諾を得る必要がありますが、同時にファクタリング利用者がファクタリング、つまり売掛債権を譲渡したことを知られてしまいます。
売掛先から、売掛債権を譲渡するほどファクタリング利用者が資金繰りに困っているのではないかと疑われてしまうリスクがあります。
その結果、売掛先との関係が悪くなってしまうおそれがあります。
即日での資金調達はできず、時間がかかる
3社間ファクタリングは、即日での資金調達はできず時間がかかります。
というのは、売掛先の承諾を得る必要があるためです。
すぐに売掛先の承諾を得られるとは限らないので、どうしても時間がかかってしまうのです。
そのため、即日もしくは数日で資金調達したい場合は、2社間ファクタリングを利用することをおすすめします。
3社間ファクタリングと2社間ファクタリングの違い
3社間ファクタリングと2社間ファクタリングの違いをまとめると、次のようになります。
項目 | 3社間ファクタリング | 2社間ファクタリング |
---|---|---|
契約当事者 | ファクタリング利用者 ファクタリング業者 売掛先 |
ファクタリング利用者 ファクタリング業者 |
売掛先への債権譲渡通知・承諾 | 必要 | 不要 |
手数料 | 低い(1~9%程度) | 高い(10~30%程度) |
入金までの期間 | 1週間以上 | 最短即日~数日 |
審査 | 易しい | 厳しい |
債権譲渡登記 | 不要 | 必要(原則) |
大手金融機関 | 取扱いあり | 取扱いなし |
3社間ファクリングと2社間ファクタリングの最も大きな違いは、「売掛先が契約に加わるか否か」になります。
というのは、売掛先が契約に加わることによって、3社間ファクタリングと2社間ファクタリングの違いが生じるからです。
例えば、上の表において、3社間ファクタリングで売掛先への債権譲渡通知・承諾が必要なのは、売掛先が契約に加わっているからです。
一方、2社間ファクタリングは、売掛先が契約に加わっていないため、債権譲渡通知・承諾は不要になります。
このようにその他の違いも、ほとんどが売掛先が契約に加わったことによる違いから生じています。
まとめ
この記事では、3社間ファクタリングについて、メリット・デメリットを解説するとともに2社間ファクタリングとの違いを解説しました。
ファクタリングは、多くの個人事業主や中小企業から注目されている資金調達方法です。
銀行融資などより早く資金調達できるほか、ファクタリングは借入れではなく債権譲渡であるなどのメリットがあるからです。
ファクタリングのうち、3社間ファクタリングは売掛先に売掛債権を譲渡したことが知られるため、資金繰りが悪いのではと疑われるおそれがあるというデメリットがあります。
そのため、現状では2社間ファクリングの利用者のほうが多くなっています(参考:「ファクタリング(売掛債権譲渡)利用者への総合調査/2020年版リサーチ調査」)
ファクタリングに興味はあるけど、利用したことがないという人は多いと思います。
しかし、ファクタリングは決してあやしい資金調達方法ではないので、利用を検討してみてください。
この記事が、ファクタリングを利用する際の参考になれば幸いです。