ファクタリングの取り立て。使っても問題ない業者を見抜くポイントは?

ファクタリングの取り立て。使っても問題ない業者を見抜くポイントは?

2社間ファクタリングを利用した場合、本来の売掛債権の支払期日が到来したら、ファクタリング業者に利用者が支払いをしなくてはいけません。

しかし、何らかの理由で支払いが滞った場合、ファクタリング会社は取り立てを行います。

放置しておくと最終的には会社存続の危機にもなりかねない上に、悪質な業者の場合、取り立て行為自体にも問題がある可能性が否定できません。

慎重に対応してください。

今回の記事では、ファクタリングの取り立ての流れとその他の注意点について解説します。

一般的なファクタリングの取り立ての流れ

一般的なファクタリングの取り立ての流れは、以下の通りです。

  1. 債務の支払状況を調べられる
  2. 任意で支払を要求される
  3. 支払督促や訴訟を起こす
  4. 強制執行が行われる

それぞれのステップについて、詳しく説明します。

1.債務の支払状況を調べられる

まず、ファクタリング業者は債務の支払状況を調べてきます。

利用者が本来の売掛債権の支払期日が到来しているにもかかわらず支払わない場合「取引先が支払ってくれない」と弁解するのは珍しくありません。

そこで、ファクタリング業者は、本当に取引先が支払っていないのかを調べます。

ファクタリング業者から取引先に債権譲渡通知を送るのが一般的な方法です。

仮に、本当に取引先が支払っていなかった場合は、ファクタリング業者が直接取り立てを行います。

2.任意で支払を要求される

取引先が支払っていたにもかかわらず、利用者が返済しなかった場合、ファクタリング業者はまず任意で支払いをするよう求めます。

電話やメール、郵便などで支払うよう連絡するのが一般的です。

内容証明郵便が使われるのも珍しくありません。

法的効力はないため差押えなどの直接的な手段はとれませんが、郵便局や差出人の手元に控えが残るため、有力な証拠になります。

また、ファクタリング業者の担当者が事務所や営業所、工場など利用者がいる場所に出向くこともあるでしょう。

3.支払督促や訴訟を起こす

任意での取り立てでも利用者側が支払いに応じない場合、ファクタリング業者は支払督促や訴訟を起こします。

支払督促とは、債権者側が簡易裁判所に申立を行い、主張に合理性があると認められる場合は支払うよう促すことができます。

2週間以内に異議の申し立てがなければ、債権者が強制執行の申立てをすることができる流れです。

訴訟とは、簡単に言うと「裁判を起こす」ことです。

ファクタリング業者が契約書や契約に至るまでのやり取りなどの証拠を示し、最終的に裁判所が利用者に支払い命令の判決を下せば、ファクタリング業者はいつでも利用者の財産の差し押さえができるようになります。

4.強制執行が行われる

強制執行とは、いわゆる差し押さえや競売のことです。

以下のような換金性のあるある財産が対象になります。

  • 預金
  • 不動産
  • 売掛債権
  • 保険
  • 株式などの有価証券
  • 車などの動産

強制執行が行われると、社内の財産がほとんど使えなくなるため、営業の継続が困難です。

倒産するリスクも一気に跳ね上がります。

結局のところ、こうなる前に支払うべき金額を払うのがしかるべき対応です。

ファクタリングの取り立ては貸金業法の対象外

ファクタリングは一部の例外を除き、貸金業法による規制は受けません。

そのため、貸金業法で定められている取り立て方法に沿っていなかったとしても、法律上は問題ないことになります。

より深く理解するために、貸金業法における取り立てについて解説します。

消費者金融の場合はある程度コントロールされている

消費者金融など、貸金業法による規制を受ける業者の場合、取り立てについてもルールを遵守することが求められます。

貸金業法

第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
一 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
二 債務者等が弁済し、又は連絡し、若しくは連絡を受ける時期を申し出た場合において、その申出が社会通念に照らし相当であると認められないことその他の正当な理由がないのに、前号に規定する内閣府令で定める時間帯以外の時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
三 正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
四 債務者等の居宅又は勤務先その他の債務者等を訪問した場所において、債務者等から当該場所から退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず、当該場所から退去しないこと。
五 貼り紙、立看板その他何らの方法をもつてするを問わず、債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。
六 債務者等に対し、債務者等以外の者からの金銭の借入れその他これに類する方法により貸付けの契約に基づく債務の弁済資金を調達することを要求すること。
七 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
八 債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取立てに協力することを拒否している場合において、更に債権の取立てに協力することを要求すること。
九 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
十 債務者等に対し、前各号(第六号を除く。)のいずれかに掲げる言動をすることを告げること。
引用:貸金業法

簡単にまとめると、お金を借りた人(債務者)やその家族、友人知人の私生活を侵害する形での取り立ては固く禁じられています。

取り立て行為において、貸金業法の規定に違反するやり取りがあったと判定された場合、行政処分が下されるのも珍しくありません。

このような背景を踏まえると、消費者金融など貸金業法による規制を受ける業者に関しては、厳しい取り立てが行われないようコントロールされていると言って良いでしょう。

他の法律に反する方法はアウト

一方、ファクタリング業者は一部の例外を除き、貸金業者ではありません。

ウィズリコースファクタリングなど、実質的な融資とみなされる契約形態を扱うファクタリング業者の場合は、貸金業法に基づく登録を済ませているケースもあります。

しかし、全体の数からみれば少数派であるため、ここでは「ファクタリング会社は基本的に貸金業者ではないため、貸金業法による規制も受けない」としておきましょう。

取り立てが貸金業法の規制に沿った方法でなかったとしても、それだけでは問題になりません。

ただし、刑法など他の法律に照らし合わせて違法と判断される取り立て方法は、ファクタリング業者であっても使えないので要注意です。

具体例を表にまとめました。

暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強要罪、恐喝罪 ・「○月○日までに払わないと殺す」などと脅す
名誉棄損罪 ・周囲に聞こえるように「金返せ、泥棒」と騒いだり、看板やチラシを配ったりする
・インターネット掲示板やSNS上に誹謗中傷のコメントを書き込む
建造物侵入罪、不退去罪 ・勝手にオフィスに立ち入ったり、帰るように促してもその場を立ち去らない
窃盗罪 ・裁判で権利が確定しないうちから商品を勝手に引き揚げた

ファクタリング業者の取り立てが、あきらかに他の法律に照らし合わせても違法と考えられるものだった場合は、弁護士に相談し、しかるべき対応を講じましょう。

また、ファクタリング業者側が弁護士を使って取り立てを行おうとするケースも散見されます。

代表的な対応は以下の通りです。

  • 弁護士名で内容証明郵便が届く
  • 弁護士に交渉や合意書作成、入金確認を依頼する
  • 支払督促や訴訟、仮差押、強制執行などの裁判手続きを弁護士に依頼する

ファクタリング業者が弁護士を使って対応してくる場合、その費用も利用者に請求することが考えられる点には注意すべきでしょう。

使っても問題ないファクタリング業者を見抜くポイントは?

ファクタリングを使う以上は、定められた支払期日に返済するのが大前提です。

しかし、何らかの事情で返済できなかった場合、厳しい取り立てが行われ、結果として自身や周囲の人に危害が及んではたまりません。

やはり、事前に使っても問題がないファクタリング業者かを見抜ければそれに越したことはないでしょう。

ここでは、使っても問題ないファクタリング業者を見抜くポイントを解説します。

1.貸金業法に準じた取り立て方法を実施しているかを確かめる

ファクタリング業者を選ぶ際は、貸金業法に準じた取り立て方法を実施しているかを確認しましょう。

すでに触れた通り、ファクタリング業者はほとんどの場合、貸金業者としての登録は済ませていません。

そのため、取り立て方法が貸金業法に沿っていなかったとしても、法律上は問題ないことになります。

しかし、ファクタリング業者の裁量で貸金業法に準じた取り立て方法を実施することは可能です。

貸金業法の趣旨の1つに、消費者の保護が挙げられます。

取り立て方法についても、可能な限り、消費者の利益を害さないのを目的として規定が定められているのが大きな特徴です。

いわば、貸金業法に準じた取り立てをしているかは、「利用者やその家族、知人に危害が及ぶような取り立てはしない」業者かどうかを見抜く1つの基準と言っても過言ではないでしょう。

2.会社概要はかならず確かめる

ファクタリング業者の会社概要もかならず確かめましょう。

ファクタリングに限ったことではありませんが、取引をする際は「相手の会社がどんな会社なのか」を調べるのはとても重要です。

以下の条件にあてはまるなら、安心して使えるファクタリング業者と判断してかまいません。

  • 上場企業、銀行のグループ会社である
  • 銀行やベンチャーキャピタルからの出資を受けている
  • 営業年数が長く、相応の取引実績がある
  • 経営革新等支援機関として認定を受けている

3.Web、SNS上の口コミもチェックする

ファクタリング業者を選ぶ際は、WebやSNS上の口コミもチェックしましょう。

口コミに関しては、真偽のほどを確かめようがないので、うのみにするのは好ましくありません。

数件程度であれば、過去に利用を断られた人が腹いせに書き込んでいる可能性もあるので、そこまで心配する必要もないでしょう。

しかし、あまりに件数が多い場合は、そのファクタリング業者の対応品質を疑ったほうが良さそうです。

4.手数料は事前に見積もりを取る

ファクタリング業者の利用を検討する際は、手数料に関して事前に見積もりを取りましょう。

一般的な(買取)ファクタリングの場合、手数料の相場は以下の通りです。

  • 2社間ファクタリング 10%~20%
  • 3社間ファクタリング 1%~10%

この範囲を明らかに外れる手数料を提示された場合は、まずは理由を聞きましょう。

明確な根拠を示してくれ、納得できるなら問題ありませんが、そうでなければ一度持ち帰ったほうが無難です。

5.やり取りで不審な点があったらきっぱりと断る

ファクタリング業者とのやり取りで不審な点があったら、一度立ち止まって利用の可否を検討しましょう。

ファクタリング自体は合法な資金調達手段ですが、中にはファクタリングを装って接近し、違法貸付を行う悪質な業者もいます。

このような悪質な業者の被害に遭わないためにも、やり取りをする際は、不審な点がないかチェックしてください。

「これはおかしい」と思う点があれば、きっぱりと断りましょう。