ファクタリング契約の流れと注意点。トラブル防止のコツも紹介

ファクタリング契約の流れと注意点。トラブル防止のコツも紹介

ファクタリングは売掛債権を早期に現金化できるため、資金繰りの改善にもつながる便利なサービスです。しかし、多額のお金が動く契約である以上、細心の注意を払って進めなくてはいけません。

今回の記事では、ファクタリングの契約にあたって注意すべき点を、初めてファクタリングを使う人にもわかるように解説します。この記事を読めば、何に気をつければ良いかが分かるようになるはずです。

ファクタリングとは


前提として、ファクタリングが何かについて簡単に解説しておきます。

売掛債権の現金化

ファクタリングは、一言でまとめると売掛債権の現金化です。ファクターと呼ばれる専門業者と契約し、ファクタリング利用社が保有する売掛債権を売却し、手数料が差し引かれた金額を入金してもらうのが基本的な流れとなります。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリング

ファクタリングを「どんな会社が関与するか」で分類すると、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分かれます。

2社間ファクタリングとは、ファクタリング利用社とファクターとの間のやり取りで完結するタイプのファクタリングです。取引の基本的な流れは以下のようになります。

  1. 売掛債権が発生する
  2. 売掛債権買取契約を締結し、買取金を支払う
  3. 取引先からファクタリング利用社に売掛債権が支払われる
  4. ファクタリング利用社からファクターに売掛債権を支払う

一方、3社間ファクタリングとは、ファクタリング利用社とファクター、取引先の3社間でのやり取りが必要になるタイプのファクタリングです。取引の基本的な流れは以下のようになります。

  1. 売掛債権が発生する
  2. 取引先に売掛債権買取の通知をし、承諾を得る
  3. ファクターと売掛債権買取契約を締結し、買取金を支払ってもらう
  4. 取引先がファクターに売掛債権を支払う

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いを表にまとめました。

項目 2社間ファクタリング 3社間ファクタリング
取引先への通知 なし あり
売掛債権の回収 ファクタリング利用社が回収 ファクターが回収
手数料 高め(10%~30%) 低め(5%~10%)
メリット ・審査が早い
・取引先にファクタリングを使ったことが知られない
・比較的手数料が安い
・売掛債権の回収をファクターが代行してくれる
デメリット ・比較的手数料が高め
・取引先から売掛債権を回収したらファクターに支払わないといけない
・信用情報の調査や取引先の承認が必要となるため、契約までに時間がかかる

ファクタリング契約の流れ


次に、ファクタリング契約を締結する際の流れについて解説します。

2社間ファクタリングの場合の基本的な流れ

2社間ファクタリングの場合の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 相談する
  2. 申込する
  3. 必要書類を提出する
  4. 審査を受ける
  5. 契約する

それぞれのステップについて、詳しく解説します。

事前相談する

ほとんどのファクターで、正式な申込に先立って無料相談を受け付けています。ここである程度はファクタリングを利用できるかの見通しが立つでしょう。

申込する

事前相談を受け納得したら、正式な申込に進みましょう。対面、オンラインなどファクターによって利用できる申込方法は異なります。

必要書類を提出する

申込の際には、必要書類を提出しましょう。ファクターによっても細かい扱いは異なりますが、一般的に提出が求められる可能性が高い書類を紹介します。

登記簿謄本(法人の場合) 会社の重要事項が記載された書類で、会社が実際に存在するという証明として広く使われる。法務局窓口、郵送、オンライン請求で取得可能。
身分証明書 運転免許証、個人番号カード(マイナンバーカード)、パスポートなど。
決算書(法人の場合)
確定申告書(個人事業主)
過去3期分はあるのが望ましい。
印鑑証明書 市区町村役場に登録された印鑑(はんこ)を公的に認める書類のこと。事前に印鑑登録の手続が必須となる。
通帳 出入金の情報を確認し、財務状況や取引先との過去の取引を確認するために使う。
売掛債権の裏付けとなる書類 請求書・発注書・納品書・契約書など。

審査を受ける

提出した書類を精査するとともに、事業内容等のヒアリングを行います。対面、オンライン、電話のどれで行うかはファクターによっても差があるため、申込の際に確認しましょう。

契約する

審査に通過したら契約を結びます。対面で行うファクターが多いですが、オンラインで対応してくれることもあるので、事前に確認しましょう。

3社間ファクタリングの場合は取引先への承諾が必須

3社間ファクタリングの場合の流れも、大部分は2社間ファクタリングと変わりません。

  1. 相談する
  2. 取引先にファクタリング利用の承諾を得る
  3. 申込する
  4. 必要書類を提出する
  5. 審査を受ける
  6. 契約する

決定的に異なるのが「取引先にファクタリング利用の承諾を得る」ところでしょう。3社間ファクタリングは最終的にはファクターが取引先の売掛債権を回収することになります。そのため、債権譲渡通知をしなくてはいけません。先立って承諾を得るのは必須になります。

ファクタリング契約書で確認すべき項目

ファクタリング契約を結ぶ際は、契約書(売掛債権譲渡契約書)の取り交わしを行います。契約書には、ファクタリングを利用するにあたって重要な情報が盛り込まれているので、かならず確認しましょう。理解や納得ができない部分があれば、その場で質問してください。

償還請求権

万が一取引先の会社から売掛債権を回収できなかった場合、ファクターが利用者に代わりに支払うよう請求できる権利を指します。償還請求権が付されている場合には、契約書にその旨が盛り込まれているはずです。償還請求権が付されているファクタリングを「ウィズリコースファクタリング」、付されていないファクタリングを「ノンリコースファクタリング」と言います。

ウィズリコースファクタリングには要注意

実際のところ、一般的なファクタリングのほとんどはノンリコースファクタリングです。ウィズリコースファクタリングは売掛債権の売却というより、実質的には貸付と同様の機能を有するものととらえられます。

参照:金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」

ファクターが貸金業者として各都道府県知事や本店所在地を管轄する財務局長への登録を済ませているなら、ウィズリコースファクタリングを提供するのは特段問題ありません。貸金業者が貸金業法の範囲内で貸付業務を行っているに過ぎないためです。

しかし、済ませていないファクターがウィズリコースファクタリングを提供するのは貸金業の無登録営業にあたる可能性が高くなります。トラブルを避けるためにも、使わないようにしましょう。

債権譲渡通知

取引先に売掛債権をファクターに譲渡した旨を伝えることです。3社間ファクタリングでは必須となりますが、2社間ファクタリングでは必要ありません。

2社間ファクタリングでは、ファクタリング利用社が取引先より売掛債権を回収し、その後ファクターに返済するという流れをたどります。そのため、基本的に取引先がファクタリングを使った事実を知ることはありません。

2社間ファクタリングを使うにもかかわらず、契約書に債権譲渡通知の条項が盛り込まれていた場合は、内容や意図をよく確認しましょう。

債権譲渡登記

売掛債権を回収する権利がファクタリング利用社からファクターに移った事実を法務局で登記することを指します。権利関係をはっきりさせるために行う手続きです。なお、債権譲渡登記にあたっては手数料(登録免許税)がかかります。この手数料も、ファクタリング利用社の負担として費用に組み込まれることが多いです。

一点注意すべきなのは、債権譲渡登記が行われたかどうかは、誰でも法務局に行けば閲覧できることでしょう。取引先や金融機関に債権譲渡をした旨が知られるリスクがゼロではない点にも注意しましょう。

手数料

ファクタリングを利用する際、手数料は必須です。契約書に書かれている手数料の額および計算の根拠は、かならず確認しましょう。相場と比べてあまりに高い場合は、まずは担当者に質問してください。的確な回答が得られなかった場合は、すぐに契約せず「一度持ち帰ります」と場を離れたほうが無難です。

保証人、担保に関する条項

ファクタリングの利用にあたっては保証人、担保は不要です。それにも関わらず、契約書に保証人や担保の用意を前提とした旨や具体的な内容が盛り込まれていた場合は、絶対に契約しないようにしましょう。

報告義務

契約書に、取引先の状況に関する報告義務が盛り込まれていたら、ファクタリング利用社は取引先の状況をファクターに報告する義務が生じます。仮に報告を怠ったのが原因でファクターが損害を被った場合、ファクタリング利用社が損害賠償請求を受ける可能性もあるので注意が必要です。

損害賠償、違約金

ファクタリングは、ファクタリング利用社およびファクターの双方に義務が生じる契約です。損害賠償や違約金が発生する具体的なケースを、事前に確認しておきましょう。あまりに損害賠償や違約金が発生するケースが広かったり、金額が高額だったりする場合、契約はおすすめできません。

契約の解除

ファクタリングの契約期間中に重大な契約違反があった場合は、契約を解除できます。何をしたら重大な契約違反になるのかを事前に理解しましょう。なお、契約を解除した場合は、供給されていた資金は返還しなくてはいけません。

契約期間と解約方法

ファクタリングの契約を結ぶ際は、契約期間と解約方法をしっかり確認しておきましょう。併せて自動更新の有無の確認も必要です。

2社間ファクタリングでは業務委託契約書も必要

2社間ファクタリングを利用する場合は、業務委託契約書も必要になります。取引先の売掛債権を回収する権利は、ファクタリング契約を結んだ時点でファクタリング利用社からファクターに移るためです。ただし、売掛債権の回収をファクタリング利用社が引き続き行うため、この部分についてファクターと業務委託契約を結ぶ必要があると考えましょう。

ファクタリング契約でのトラブルを防ぐための3つのチェックポイント


ファクタリング契約を結ぶ際に契約書をしっかり確認しなかったため、あとあとトラブルに巻き込まれるのは珍しくありません。トラブルを防ぐためには以下の3点についても確認しましょう。

見積もりと実際の手数料に差がないか

ファクタリンを利用する際の手数料が高いと、手元に入ってくる金額が少なくなり、損をします。手数料が見積もりよりも大幅に高くないか、かならず確認しましょう。手数料に差はなくても、契約時にさまざまな費用を請求してくるケースもあるので要注意です。

契約期間は希望通りか

契約書に定められている契約期間が、自身の希望通りになっているかを確認しましょう。悪質なファクターの場合「最低契約期間は半年」など、契約期間に条件が付けてくる可能性も捨てきれません。契約期間に条件が付けられていた場合は、途中でも解除できるかを確認してください。解除できない場合は契約自体を見送りましょう。

契約書の控えを渡してくれるか

一般的な商取引で契約書を作成した場合、当事者同士が控えを1通ずつ持つのが通常の流れです。ファクタリングも例外ではありません。それだけに、ファクターが契約書の控えを渡してくれなかった場合は警戒しましょう。

そもそも、控えを渡してこないのは、契約内容に違法もしくは違法ではないものの問題がある条項が含まれているためです。トラブルが起きた際には重大な証拠になります。訴訟が起きた場合に不利になるのをおそれ、渡してこない悪質なファクターがいても不思議ではありません。後々深刻なトラブルに発展しかねないため、契約自体を取りやめましょう。

まとめ

ファクタリングにおいては、契約および契約書は非常に重要な意味を持ちます。内容をよく理解せず進めてしまうと、自分に不利な契約を結んでしまい、あとあとトラブルに見舞われかねません。そのためにも、まずは契約書に何が書かれているのかを理解したうえで、わからない部分については質問し、疑問点のない状態にするのを心がけましょう。