運送業の資金繰りを改善する資金調達方法や注意点を紹介

運送業はその事業特性や近年の増大する運送ニーズの増大などを背景に、資金繰りに苦慮する企業が少なくありません。事業の効率化やM&Aの実施、円滑な資金調達が資金繰りを安定化させ、堅実に経営を継続するうえでは重要です。

この記事では運送業の資金繰りを改善する手法や、検討しやすい資金調達方法について紹介します。資金繰りの安定化に悩む運送業の経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

運送業の資金繰りにおける課題


運送業は、需要が景気に左右されやすく業績が不安定になりがちなほか、燃料費などの変動要因もあり、資金繰りが不安定になりやすい業態の一つです。

また、法人との取引では売上発生から資金回収まで数カ月程度のタイムラグが発生する点もネックに。足元は運送需要の急増と人手不足に対する対応の苦慮や、利益率の低減などが資金繰りの圧迫要因となっている企業も少なくありません。

売上が景気に左右されやすい

運送業は経済の景気変動に大きく影響を受けます。景気の低迷期や需要の減少期には、輸送需要が低下し売上が減少しがちに。一方で、車両や物流施設などの設備は柔軟に増減させるのが難しく、不景気のタイミングでは固定費が経営を圧迫するリスクの高い業種といえます。

多くの企業が、普段の輸送需要に対応できるよう設備を維持しながら余剰設備を抑えて安定経営を持続させています。しかし、時には余剰設備の維持・管理コストが重い負担となることも。自社所有するでなく、賃貸やリース、レンタルなどをうまく組み合わせて、環境変化に柔軟に対応できる体制を整えることが大切です。

変動費やトラブルなどによる不確実性も

運送業では燃料代が大きなコストの変動要因となります。原油高の時期などはコストが圧迫されて収益性を維持するのが難しくなるでしょう。

また、車両の破損や事故、荷物の損害などのリスクを完全にゼロにすることは困難です。このような不測の事態が発生すると、突然まとまった負担が発生することもあります。事故やトラブルの発生が、資金繰りの圧迫要因となるケースも少なくありません。

売上が発生してから入金まで時間がかかるケースも

取引先からの支払いが売上が発生してから一定の期間遅れる場合があります。

特に法人との長期・大口の取引の場合などには、実際に輸送サービスを提供してから、入金まで数か月のラグがある場合も。売上に伴う現金が手に入るよりもかなり早いタイミングで費用が発生するため、キャッシュフロー管理が難しくなる企業も少なくありません。最悪の場合は、売り上げが出ているのに資金繰りが間に合わずに、黒字倒産に陥るリスクもあります。

物流需要の増大に伴う人手不足や人件費高騰がネックに

近年、EC(電子商取引)の発展やグローバルな物流需要の増大に伴い、運送業における人手不足や人件費の上昇が課題となっています。

新型コロナ禍で対面での商業施設の利用が減退する中で、代替手段としてECを使う人が増えたことで、一段と物流需要が増大しました。需要に対応するためには労働力の確保が必要になりますが、思うように労働者を集められず、人手不足に陥っている運送業者も少なくありません。

人手不足によってビジネス機会を逸失したり、需要にこたえるために労働条件を引き上げて人件費が圧迫されたりして、資金繰りの圧迫要因となっています。

運送業に資金繰りの解決策


運送業の資金繰りを改善するためには、小口取引を増やすなど事業領域の工夫や、コストや資産の圧縮、M&Aを活用した事業整理なども有効です。同時に資金調達手段の多様化も資金繰りの安定化に寄与します。

小口取引・大口取引をバランスよく持つ

大口の法人取引は、入金までのタイムラグが発生しやすい傾向にあります。また大口取引に依存していると、その取引の入金が滞ったり、契約終了になったりすると一気に資金繰りが悪化するため、リスクが高い経営状況といえるでしょう。

小口取引を増やすことで、収益の安定化や支払い遅延のリスクを軽減することができます。新規の小口取引先を獲得したり、既存の取引先との関係を強化したりするための努力を行いましょう。

一方で小口取引は輸送量が低く、同時に売り上げも拡大しにくくなり、効率が悪くなる原因になることも。大口・小口をうまく組み合わせて、安定性と効率性を兼ね備えた収益基盤を構築するのが望ましいといえます。

人件費などコストの削減

運送業において、人件費は大きなコスト要因になりがちです。労働力の効率的な活用や労働生産性の向上を図ることで、人件費を削減することができます。例えば、効率的な配車システムの導入やルート最適化の改善などが有効です。また、労働力の教育や訓練を通じてスキル向上を図り、生産性を高めることも重要です。

また、法務や経理、事務などの付帯作業や管理業務などをアウトソーシングしたり、ツール・システムを導入したりすることでコスト削減を進めるのも一案です。

車両や設備などの固定資産のスリム化

運送業では車両や倉庫などの固定資産が大きい傾向にありますが、全てを自社保有すると非効率な経営体質となることも。リースやレンタルなどのオプションをうまく活用すれば、固定資産を圧縮して、必要な時に必要な資産を柔軟に活用できる事業体制が実現します。

コスト優位な設備の積極的な導入

新しい設備の方がランニングコストが抑えられるケースは少なくありません。運送業に関連するところでいうと、ハイブリッド車を導入することなどにより走行距離当たりの燃料費の抑制につながります。また、質の高いナビゲーションシステムや物流管理システムを導入することで、効率的な輸送を実現できるかもしれません。

倉庫など保管施設の照明や冷暖房を更新することで、電力消費をおさえることもできるでしょう。費用対効果を慎重に試算する必要はあるものの、新しい設備の導入が長期的な収支安定につながる場合があることを忘れてはいけません。

M&Aの活用

M&A(合併・買収)は、運送業の成長と資金繰りの改善に貢献する手段の一つです。資金繰りの圧迫要因となる事業を売却したり、逆に、自社とのシナジーが発揮される領域を買収するなどして、経営体質を改善させることが可能です。特に事業売却ではまとまった資金が手に入るため、資金繰り改善の特効薬となるケースも少なくありません。

資金調達手段の多様化

資金繰りを改善するためには、単一の資金調達手段に依存せず、複数の手段を活用することが重要です。融資の実行や補助金・ファクタリングの活用など、多様な資金調達手段から最適な方法を選択できるようにしておきましょう。

特に融資実行については金融機関のリレーション構築が重要です。銀行、ノンバンク、地域金融機関などの金融機関開拓を積極的におこなってください。

運送業に有効な資金調達方法


資金繰りを改善・安定化させるためには、資金調達手段を確立させることが大切です。日頃から金融機関との関係性を構築して、多様な金融機関に融資相談ができるようにしておくとよいでしょう。

銀行や地域金融機関のほか、ノンバンクのビジネスローンもおさえておいてください。また、政府や自治体が提供する補助金など、融資以外でも資金調達手段は複数存在します。ここからは運送業が検討しやすい資金調達手段について紹介していきます。

銀行や地域金融機関からの融資

銀行や地域金融機関からの融資は、運送業にとって一般的な資金調達手段です。銀行との関係を築き、信用を構築することが重要です。

融資を受ける際には、適切な返済計画や担保の提供が求められる場合があります。資金使途の明確化や返済計画の具体化、適切な財務諸表の提出など、銀行の要求に応える準備をしておきましょう。

返済の安定性を重視するほとんどの金融機関は、経営状況が厳しくなってから相談しても融資を受けるのが難しくなります。不景気の到来などが想定されるときには、事業が安定しているうちから資金調達について相談して、健全性を守る工夫が重要です。

また政府系の金融機関である日本政策金融公庫は個人事業や中小企業の支援を重視する企業です。中小の運送業者でも、他の金融機関と比べて融資が受けやすかったり、低金利で資金調達を実現したりできる可能性もあるので、積極的に活用しましょう。

ノンバンクのビジネスローン

ノンバンクのビジネスローンは、銀行以外の金融機関からの資金調達手段です。銀行や地域金融機関など、預金系の金融機関と比較すると審査が緩く、迅速に融資実行が可能なのが特徴です。一方で金利が高めに設定されるケースが多く、恒常的に利用すると資金調達コストが高くなり、経営を圧迫するリスクがある点には留意が必要です。

ノンバンクの中にはリース事業も並行している企業も多くなっています。運送業の場合は車両や設備のリースも多用すると想定されるため、一つのノンバンクでリースと融資双方で取引を行うことで関係性を深めて、融資の相談を柔軟におこなえるようにしておくのも有効です。

補助金の活用

政府や地方自治体が提供する補助金や助成金は多岐にわたり、条件次第で運送業が使用できる余地のある制度が複数あります。

例えば「小規模事業者持続化補助金」は2023年5月までで多様な業種の採択者がみられ、運送業でも販路の拡大や事業の効率化などを推進する用途として適用を受けられる可能性があります。また、「IT導入補助金」も中小企業のIT導入に適用される補助金であり、用途が合っていれば、運送業でも利用できます。

補助金は申請期間が定められていて、所定の書類提出や審査通過などが求められます。小まめに自治体や政府のWebサイトをチェックして、自社が適用しうる補助金についておさえておきましょう。

事業用クレジットカードの活用

厳密には資金調達とは異なりますが、事業用クレジットカードの活用も資金繰りの有効な手段です。事業用クレジットカードを使用すると日々の細かい費用への支払いに現金が不要となるため、間接的に資金調達と同じ効果を発揮して、資金繰りの安定化に役立ちます。

個人向けのクレジットカードと同様にポイントサービスやキャッシュバックサービスなどサービスが充実したカードも増えているので、実質的なコスト抑制につながる場合もあります。

ただし買い物において現金が不要となることで、むやみに消費してコストの圧迫要因となったり、分割払いを利用して金利手数料が負担となったりするリスクも。節度を持って賢く使って資金繰りの安定化につなげることが大切です。

資産の売却

余剰資産がある場合には、売却してまとまった資金を手に入れる方法もあります。例えば本社や物流施設などを自社所有している場合、売却して賃貸やテナントを活用することで資金調達が可能です。車両も資産価値が期待できるものがあれば、余剰な分は売却しましょう。

ファクタリングの活用

ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に譲渡することで即座に現金化する方法です。

運送業では、輸送サービスの提供と入金の間にタイムラグが発生しがち。ファクタリングを活用すれば、短期間のうちに現金を調達して、他の費用への支払いや別の事業への投資に活用することが可能です。ファクタリングの利点については、このあともう少し詳しく紹介していきます。

運送業の資金調達手段としてファクタリングが有効


いくつかある資金調達手段の中でも、ファクタリングは、運送業にとって便利で活用しやすい資金調達手段の一つです。ここからはファクタリングについてもう少し詳しく紹介していきます。

ファクタリングの概要とメリット

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで、迅速に現金化する手法です。

ファクタリング会社が審査を通じて判断する限度額などに抵触しない限りは、売掛債権の額面からファクタリング会社が徴収する手数料を引いた金額を現金化できます。

取引先を介さず利用者とファクタリング会社間のみで契約する2社間ファクタリングは迅速な資金調達ができるのが特徴で、最短即日で資金調達できるファクタリング会社もあります。

このほかに取引先・利用者・ファクタリング会社で契約を結ぶ3社間ファクタリングがあります。資金調達の日数は長くなる傾向がある一方で、手数料が低い傾向にあります。自社の事情を踏まえて便利なスキームを選択しましょう。

ファクタリングは借入ではないため、利用者のバランスシートを圧迫する心配がないのが重要なメリットです。また、利用者の業績や財務状況の影響を受けにくく、売掛債権における債務者(すなわち取引先)の健全性に問題がなければ、資金調達できる可能性が充分にあります。自社の信用力が低い、中小企業でも利用しやすいのも特徴です。

ファクタリングが運送業に有効な理由

次の理由からファクタリングは運送業者の資金調達の有効な手段の一つです。

  • 支払いサイトの長い売掛債権が残りやすい
  • 季節性・市場環境変化に伴う資金需要に対応しやすい
  • 事故・トラブルなどに伴う急な支払いニーズに有効

運送業の資金繰りの課題の背景には「請求書の支払い期限まで日数がある」点があります。特に大口の取引が多いと、手元には支払いサイトの長い請求書がたまることに。ファクタリングを活用すれば、支払いサイトの長い債権を迅速に現金化して、目先の支払いや新たな事業投資に充てることが可能です。

多くの優良ファクタリング会社が実施している償還請求権なしのファクタリングであれば、万が一請求書の支払いが滞った時には資金回収やファクタリング会社への返済義務が発生しないため、資金回収リスクを減らすうえでもファクタリングが役立ちます。

また、運送業や季節や市場環境によって需要が変動しやすく、急なコストの増大や収入の増減が発生しがちです。ファクタリングは最短即日~数日程度で現金化ができるため、繁忙期などの急な支払い二ーズに対応するうえでも便利です。

いくら対策を施しても、運送業において事故や物損トラブルなどを完全に回避するのは困難です。保険などで対策を打っても、一時的な弁済・修理などの急な支払いが発生するケースも想定されます。そういったときにもファクタリングを活用すれば、素早く現金を調達してトラブル処理に充てることができます。

資金繰りの工夫と資金調達を組み合わせて健全な経営を


運送業はその事業特性上、資金繰りが難しくなりがちなビジネスの一つ。だからこそ資金繰りの工夫や資金調達手段を理解したうえで、事業環境に応じて適切な対策を取れるようにしておくことが大切です。

まずは事業ポートフォリオの工夫やコスト削減、M&Aなどを活用して、資金繰りが安定しやすい事業基盤を作りましょう。

そのうえで融資や補助金、ファクタリングなどの資金調達方法をおさえておき、状況に応じて柔軟に活用できるようにしておいてください。平常時には資金繰りの余裕をもたせておき、トラブル発生時や市況変化などに柔軟に対応できるようにしておきましょう。