ファクタリングはオフバランスに活用できる!仕組みやメリット・デメリットを解説

売掛債権を現金化するファクタリングは、迅速な資金調達手段としてしばしば実行されますが、実はバランスシートを圧縮するオフバランス化にも役立ちます。オフバランスが実行できれば、経営効率の改善や金融機関からの評価向上など、さまざまなメリットが期待できます。

この記事ではファクタリングを活用したオフバランスについて、仕組みやメリット、デメリットなどについて紹介します。

ファクタリングを活用したオフバランス化の仕組み


オフバランス化とは、バランスシートを圧縮することを言います。ファクタリングを活用して借入金を返済すれば、オフバランス化を実行できます。

オフバランス化とはバランスシートの圧縮

企業のバランスシートの圧縮とは、総資産の総額を縮小することを意味します。単に圧縮するだけなら、数字上は純資産を削って資産を減らすことでも達成できますが、これでは財務体質が悪化するため、資産を流動化して負債を削減するのが一般的です。

バランスシートを縮小しても利益水準が変わらなければ、効率の良い経営ができていることになります。また、自己資本比率の改善や、負債総額の削減など、複数のメリットが期待できる施策です。

ファクタリングによるオフバランス化

ファクタリングを活用すれば、簡便にオフバランス化を実行できます。具体的にはファクタリングで調達した資金を原資に、借入の一部を返済すればよいのです。

たとえば、いま下記のような財務バランスの企業があったとします。

資産

  • 売掛金:100万円
  • その他の資産:900万円

負債・純資産

  • 負債:600万円
  • 純資産:400万円

企業の総資産は1,000万円、負債額が600万円、自己資本比率は40%です。ここで、売掛金を全額ファクタリングに出したとしましょう。なお、ここではファクタリングに伴う手数料は考えないものとします。もし、そのまま現金として保有した場合には、次のようなバランスシートになります。

資産

  • 現預金:100万円
  • その他の資産:900万円

負債・純資産

  • 負債:600万円
  • 純資産:400万円

さらに、現金の100万円で負債のうち100万円を返済したあとのバランスシートは、次の通りです。

資産

  • その他の資産:900万円

負債・純資産

  • 負債:500万円
  • 純資産:400万円

総資産が900万円に減り、さらに負債総額が500万円に圧縮されています。さらに、自己資本比率も44.4%に改善しています。このように、オフバランス化は財務体質の改善につながるのです。

ファクタリングによるオフバランス化のメリット


ファクタリングを活用したオフバランス化には、次のようなメリットがあります。

  • 経営効率が向上する
  • 財務体質が改善する
  • 金融機関からの評価も向上する
  • 迅速に実行できる
  • 本業に影響が出にくい

最初の3つがオフバランス化一般に当てはまるメリットで、最後の2つはファクタリングによるオフバランス化ならではのメリットです。

経営効率が向上する

企業の経営効率の指標の一つであるROAは、オフバランス化によって改善します。ROAとは総資産と企業の利益の比率で、企業が資産を活用していかに効率的に利益を実現しているかを示す数値です。

ROA=利益÷総資産

たとえば、ファクタリングによって総資産を1,000万円から900万円へ圧縮したとします。この企業の利益が100万円だった場合、オフバランス化前後のROAは次の通りです。

  • オフバランス化前:100万円÷1,000万円=10%
  • オフバランス化後:100万円÷900万円=11.1%

資産が多いと、その分資金調達のコストや維持・管理の手間などがかかります。そのため、同じ利益が実現できるなら、基本的に企業の資産規模は小さいほうが効率的です。オフバランス化によって、企業の経営効率を改善できます。

財務体質が改善する

オフバランス化を実行すると、自己資本比率が改善します。自己資本比率は企業の財務体質の主要な指標の一つです。

自己資本比率=純資産÷総資産
総資産=負債+純資産

財務体質が健全な方が、企業としては経営が安定しやすく、事業環境の変化や業績悪化に対する耐久力が向上します。オフバランス化を実行すると負債が削減されて、財務体質の改善が実現するのです。

金融機関からの評価も向上する

オフバランス化により、金融機関の評価が改善します。まず、経営効率の向上や財務体質の改善は、いずれも評価上プラスに働きます。こうした企業は、少ない資産で潤沢な利益を稼ぎ、さらに健全な経営が期待できるからです。

さらに、負債額の削減も金融機関からの評価にはポジティブに働きます。金融機関は、一般的に企業の信用力を評価したうえで、信用力に基づく融資などの限度額を算出します。負債が削減されれば、限度額対比で余力が多くなるため、評価向上に役立つのです。

迅速に実行できる

ファクタリングでのオフバランス化は、迅速に実行可能なのがメリットです。オフバランス化を実現するには、何らかの資産を現金化して、それを負債返済に充てなければいけません。

売掛金以外の場合は、しばしば不動産や機械・設備などの売却を通じてオフバランスを実行します。しかし、こうした固定資産の売却は、売却相手をみつけ、また譲渡の手続きを完了させるのに時間がかかります。

その点、ファクタリングは迅速に現金化ができるのが強みです。2社間ファクタリングなら最短即日、3社間でも数日程度で実行できます。

本業に影響が出にくい

本業に影響が出にくいのも、ファクタリングによるオフバランス化の特徴です。不動産や機械などを現金化する場合は、本業の業績に影響が出ない資産を活用するのが定石です。しかし、一切利益に貢献していない資産は決して多くないでしょう。

現時点で少しでも事業に活用している資産を売却すれば、多少なりとも売上や利益の減少につながる可能性もあります。

その点でいえば、ファクタリングは請求書を現金化するだけなので、債権の額面が将来現金になる以外に、新たな売上や利益を産み出すことはありません。ファクタリングが原因で、利益や売上が悪化する心配は、ほとんどないでしょう。

ファクタリングによるオフバランス化のデメリット


ファクタリングによるオフバランス化のデメリットは次の2点です。

  • 手数料により圧縮効果が減退する
  • いざというときの資金調達手段が減る

それぞれのポイントについて詳しく紹介します。

手数料により圧縮効果が減退する

ファクタリングでは、業者に支払う手数料が発生します。この手数料の分だけ売掛債権の額面より受け取れる金額が減るため、同時にオフバランスできる金額も小さくなります。

もし、財務状況に余裕があって請求書の入金期限まで待てるのであれば、ファクタリングを利用せずに入金後に負債を返済したほうが、より大きな金額でオフバランス化できるでしょう。

いざというときの資金調達手段が減る

ファクタリングを実行すると、それだけ現金化の原資は減ることになります。ファクタリングは売掛債権がなければ実行できないため、新たな売掛債権が発生しない限り、ファクタリングをすればするほど、新たな現金化の余地は限定されます。

負債を増やさずに済むファクタリングは、資金繰りが厳しくなった時の対策としてしばしば活用されます。オフバランス化したいからといってむやみに売掛債権を現金化していくと、いざというときの現金化手段がなくなるリスクがあるのです。

ファクタリングでのオフバランス化のポイント


ファクタリングでのオフバランス化を、企業の財務に負荷をかけないように効率的に実行するためには、4つのポイントがあります。次から紹介するポイントをおさえて、効率的で無理のないオフバランス化を実行しましょう。

手数料が低い業者を利用する

手数料が低い方が売掛債権に近い金額の現金が手に入るため、オフバランス化の効果は高くなります。一方で、資金繰りに困窮しているわけではないので、入金スピードなどについては、さほどこだわる必要はないでしょう。

オフバランス化を目的としたファクタリングでは、手数料にこだわって業者を選ぶのがより一層重要です。

3社間ファクタリングを利用するのも有効

手数料を大幅に下げるために、3社間ファクタリングを利用するのも有効です。取引先とも契約を結ぶ3社間ファクタリングは、業者にとって資金回収リスクが低減するため、相対的に低い手数料率で取引できる場合が多いです。

3社間ファクタリングの留意点としては、取引先にファクタリングを利用している事実が伝わって経営状況に疑念を持たれることがあります。オフバランス化を目的としたファクタリング利用であれば、取引先にその旨を伝えておけば、納得してもらえる可能性があります。

大きな金額の売掛債権でファクタリングを実行する

基本的には大きな金額の売掛債権を現金化したほうが効率的で、圧縮効果も大きくなります。まず、金額の大きな売掛債権の方が手数料率が低い傾向にあるので、効率よく現金化が可能です。

さらに、大口の債権を現金化すれば、それだけ多額の負債を一気に削減できます。オフバランス化によって享受できるメリットも大きくなるでしょう。

すべての売掛債権を現金化しない

売掛債権の一部は残しておいて、資金繰りが悪化した場合にファクタリングに出せる原資としておきましょう。手数料を支払ってすべての売掛債権を現金化してしまうと、今後状況が悪化したときに、ファクタリングという手段を取る余地がなくなってしまいます。

これでは、かえって経営上リスクが高くなるでしょう。節度を持ってファクタリングを実行し、余力を残しておくことが大切です。

ファクタリングによるオフバランス化で効率的な経営を


ファクタリングは、バランスシートを圧縮するオフバランス化を手軽に実行できる手段の一つです。財務体質の改善や経営効率の向上を目指す、攻めの戦略の一つといえるでしょう。

オフバランス化を効率的に実行するためには、手数料率をおさえつつ、大きな金額でファクタリングを行うのが有効です。取引先と折り合いがつくなら、3社間ファクタリングの活用も視野に入れましょう。

資金繰りに問題がないときでも、ファクタリングにはオフバランス化という活用余地があります。バランスシートを圧縮して、効率的な事業経営を実現させましょう。