将来債権のファクタリングは可能か?メリット、デメリットを解説

将来債権のファクタリングは可能か?メリット、デメリットを解説

将来債権を使ったファクタリングをご存じでしょうか。
将来債権とは、将来に発生すると予測される債権です。
現在、ファクタリングによる資金調達は確定債権でやりとりしています。
本記事では将来債権ファクタリングについて解説します。
内容は、将来債権ファクタリングの特徴やメリット・デメリットに関してです。
長年決まった販売先から決まった売上のある会社にとって有益な内容ですのでぜひ最後までお読みください。

将来債権とは?


将来債権とは継続して取引が行われる債権の一つです。
どのような債権を将来債権と考えられるのか、また、ビジネスで発生する他の債権についても解説します。

将来債権とは文字通り将来発生する債権

文字通り将来において発生する見込みの債権将来債権です。
例えば、契約書に1年間、毎月100万円の商品を提供するという契約が交わされている場合、入金日の確定や商品の提供がなされていなくても将来債権と考えられます。
また、発生されない場合でも、当事者間で織り込まれていれば問題ないとされています。

債権の種類は通常5種類

一般的にビジネスの上で発生する債権は次の5つがあります。

  • 確定債権
  • 仕掛債権
  • 将来債権
  • 給与債権
  • 不良債権

確定債権

確定債権とは、すでに商品やサービスの提供を終え、入金日や販売金額が決まっている債権です。
ただし、商品に不備があり、修理等が必要である場合は確定債権からは除かれます。

仕掛債権

商品やサービスの受注はあるものの、提供には至っていない債権が仕掛債権です。
受注があって注文書に金額の記載されていても、仕掛債権は商品やサービスの提供を終了していないため金額が確定していない債権です。

将来債権

将来債権とは、継続的な取引において、将来定期的に発生しうると見込まれる債権です。契約で毎月の販売金額を契約で交わしている場合、商品やサービスの入金日が確定されていなくても、契約を結んでいる場合、将来債権とみなされます。

給与債権

給与債権とは、会社と雇用契約を結んでいる従業員が得る債権です。法的性格として、通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月1回以上の定期払いの原則を有しています。

不良債権

不良債権とは、回収不能となった債権をいいます。貸し倒れ債権となると、売掛金が回収できる見通しは相当低いでしょう。

ファクタリングとは

ファクタリングには、2種類あります。
売掛金を計上する事業者が、ファクタリング会社へ売掛金を買い取ってもらう方法です。
もう一つは、売掛金に対してファクタリング会社に保証依頼し、売掛金を保証する方法です。
前者を「買取型」、後者を「保証型」といいます。
ここではファクタリングの「買取型」について解説します。

ファクタリングの仕組み

ファクタリングの仕組みは、通常次の順序で行います。(2社間ファクタリングの場合)

  1. 売掛金を計上する事業者がファクタリング会社に申込
  2. ファクタリング会社は審査に必要な書類等を利用事業者に依頼
  3. 利用事業者はファクタリング会社から依頼のあった書類を提出
  4. ファクタリング会社は書類をもとに審査
  5. 審査が通ると利用事業者はファクタリング会社と契約を締結
  6. 利用事業者の指定口座にファクタリング会社は売買した売掛金から諸費用を差し引いて入金
  7. 売掛先から入金された売掛金をファクタリング会社に入金して契約終了

ファクタリングの手法

次の2つの手法が買取型ファクタリングにはあります。

  • 2社間ファクタリング
  • 3社間ファクタリング

それぞれについて解説します。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングとは、売掛金を計上する利用事業者とファクタリング会社との間でのファクタリングです。ここには、売掛先は含まれていません。
売掛金を利用事業者はファクタリング会社に売却し、ファクタリング会社は売掛金から手数料等を差し引いた金額を利用事業者の指定口座に入金します。
売掛先から売掛金を回収した利用事業者は、ファクタリング会社に入金することで契約が終了です。
特徴として、審査が早く、売掛先に知られずに資金調達が可能である一方、手数料が通常高く設定されています。

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングとは、売掛先と売掛金を計上する利用事業者、およびファクタリング会社との間で行われるファクタリングです。
利用事業者が計上している売掛金をファクタリング会社に債権譲渡します。利用事業者あるいはファクタリング会社は、売掛先に債権譲渡の旨を伝え、売掛先の同意を求めます。
確認後、ファクタリング会社は売掛金から手数料等を差し引いた金額を利用事業者の指定口座に入金します。
売掛先は期日にファクタリング会社に売掛金を入金することで契約が終了です。
特徴として、入金が直接売掛先からファクタリング会社へされるため、未回収リスクが低いため、手数料が安いです。また、売掛先にファクタリング利用が知られることになり、取引関係に支障をきたす恐れもあります。

将来債権ファクタリングの仕組み

ファクタリングとは、売上が確定し、未収入金である売掛金を売買や債権譲渡により資金を調達するしくみです。
つまり、確定債権を使って利用事業者は資金調達を行っています。
同様に、売上が確定していない将来債権についてもファクタリングを行うことも可能です。
将来債権がなぜファクタリング可能であるのかについて解説します。

基本的にファクタリングと同じ

確定している売掛金に加え、将来債権ファクタリングは、1ヶ月後、2ヶ月後に発生すると見込まれる売掛金もファクタリングの対象となります。

例えば、確定している売掛金が100万円であれば、通常のファクタリングでは100万円を買い取ってもらい資金調達が可能です。

将来債権ファクタリングは1ヶ月先、2ヶ月先にも100万円の売上が発生することを見込まれている場合、確定している売掛金100万円に、2ヶ月先まで見込まれる200万円を加えた計300万円まで資金調達が可能であるという仕組みです。

300万円をファクタリングで資金調達した利用事業者は、売掛先のそれぞれの入金期日にファクタリング会社へ入金することとなっています。
つまり、分割での入金が可能です。

ファクタリング利用事業者は、将来債権を含む3ヶ月分の売掛金を一括して資金調達でき、入金は一括でなく売掛先の入金されるごとにファクタリング会社に入金することとなります。

なぜ将来債権ファクタリングが可能なのか?

確定していない将来債権をなぜファクタリングできるのでしょうか。
2017年の民法改正により、将来債権の譲渡性が明文化されたことによります。

民法改正で将来債権の譲渡が認められた

民法改正前から将来債権の譲渡性に関しては判例では認められていました。
将来発生する債権を目的とする債権譲渡契約も有効である判例( 最高裁平成11年1月29日第三小法廷判決 )や、目的とされた債権が将来発生したときには、特段の行為を要することなく当然に、当該債権を取得する判例があります( 最高裁平成19年2月15日第一小法廷判決 )。

しかしながら、将来債権の譲渡性に関しての法律が明文化されていませんでした。
2017年の民法改正により、将来債権の譲渡性が追加され明文化されました。

民法改正により将来債権の譲渡性の明文化により将来債権ファクタリングが可能となったわけです。

将来債権を登記でき、対抗要件を設けることが可能

債権譲渡を行う場合、ファクタリング会社の中には債権譲渡登記を行うところもあります。
登記が第三者への対抗要件であるためです。
将来債権も確定債権同様、債権譲渡を行う場合も登記ができます。
そのため、将来債権ファクタリングで債権譲渡が行われても、登記を行うことで第三者への対抗要件を備えることが可能です。

将来債権ファクタリングのメリット

将来ファクタリングのメリットとして考えられるのは以下の2点です。

  • 売掛金の分割払いが可能
  • 債権不履行など、リスクに備えて現金化が可能

それぞれについて解説します。

売掛金の分割払いが可能

将来債権ファクタリングは将来発生すると考えられる1ヶ月先、2ヶ月の売掛債権を譲渡して資金調達する手法です。
確定債権、および将来債権トータルでの譲渡ができ、一括して現金化が可能です。
しかし、利用事業者は、ファクタリング会社へは一括入金の必要はありません。
毎月売掛先から入金される売掛金を都度ファクタリング会社に入金することで問題なく、分割払いが可能です。

債務不履行など、リスクに備えて現金化が可能

将来債権を利用してファクタリングを行うことで、確定債権はもとより、1ヶ月先、2ヶ月先の将来債権を現金化して資金調達できます。
ファクタリング会社は売掛先が債務不履行に陥っても、利用事業者に請求する権利(償還請求権)はつけていないのが一般的です。
利用事業者は、将来債権ファクタリングにより早期の現金化とリスクの回避が同時に行えます。

将来債権ファクタリングのデメリット


将来債権ファクタリングのデメリットとして、次の2点があります。

  • 審査が厳しい
  • 取扱会社が少ない

審査が厳しい

将来の売上が見込まれているとはいえ、現実にはまだ売買が成立していません。
ファクタリング会社は審査にあたり、売掛先の信用状況や社会情勢、景気動向などを予測することはかなり難しいものと推測されます。
未回収リスク等を勘案すると、通常のファクタリングの審査より厳しくなることが推測されます。

取扱会社が少ない

2017年に民法が改正され、将来債権の譲渡性について明文化されました。
とはいえ、ファクタリング会社のほとんどが確定債権のファクタリングであり、将来債権ファクタリングを取り扱っているファクタリング会社が少ないのが現状です。

将来債権ファクタリングを利用する場合、Webサイトなどで取り扱っているファクタリング会社を確認して申し込むことをおすすめします。

まとめー将来債権を取り扱う市場は拡大が見込まれるー


将来債権を利用することで資金調達ができる将来債権ファクタリングについて解説しました。

通常ファクタリングとは売買が成立し、入金日、入金額が確定している売掛金(確定債権)を計上する会社が、ファクタリング会社に譲渡して現金化する資金調達方法です。

確定債権同様、将来発生すると予想される将来債権を譲渡して現金化する資金調達手段が将来債権ファクタリングです。

将来債権の譲渡性は過去の判例から認められていたのですが、2017年の民法改正により明文化されました。
法律の裏付けにより将来債権の譲渡による資金調達が可能となりました。

将来債権を計上する利用事業者は、確定債権を含め一括した資金が調達でき、ファクタリング会社には分割入金が可能なため、手持ち資金に余裕が持てるようになります。
反面、審査が厳しかったり、将来債権を扱っているファクタリング会社が少なかったりする点があります。

将来債権に関しての法整備もでき、今後取り扱う会社も今までより増えるかもしれません。
将来債権を活用し、上手に資金調達を行い、円滑な事業運営を図りましょう。